「ぐはっ」
すっかり治まったはずの頭痛がいきなりぶり返した。しかもさっきより痛みがひどくなっている。膝をつきそうになるのを何とかこらえた。
「……そ、そんな」
美琴が呆然としている。痛む頭をどうにか動かして、美琴が見ている先に俺も目を向ける。
……そいつが、いた。
何もかも溶けたはずの空間に、そいつはまだ立っている。
う、うそだろう。あの破壊力に耐えられるのか。
痛みを忘れそうになるほどの激しい恐怖に襲われた。悲鳴をあげそうになって、反射的に美琴の制服の袖を掴む。
青ざめた顏でそいつを見つめていた美琴が、ぎゅっと歯を噛んだ。
「こうなったら」
「お、おい、美琴……」
「任せて、直樹」
にこっと美琴が笑う。次の瞬間、あの翼が出現し今まで見たことのないほどの強い光を放って輝く。きりっと美琴の表情が引き締まって、気がついたら遥か上空に昇っていた。
「光の翼を使うっ!」
「ナニィイイ」
それは違うだろうというつっこみの届かない位置から、
「行けえぇぇー」
そいつへ向かって急降下していく美琴。はばたく翼の光がまともに飛び込んできて俺は目をつむるしかなかった。
まぶたを通してでさえ眩しいほどの閃光が広がった。
激しい光に音がかき消され、まったくの無音のまま時が過ぎる。
…
……
ようやく、目を開いても大丈夫というくらいになった。
こわごわと目を開く。
目の前の光景を確認する。
頭痛は治まっていた。
もう絶対に大丈夫という確信があった。
でも、でも、そんな、そんな……
「う、うそだろ、美琴……は、はは、なあ、早く出てきてくれよ。な、今度こそ本当に、『任務完了』、なんだろ、おい」
そいつの姿はもうなかった。そして美琴も、現れたときと同じく翼をつけたまま俺の前から姿を消してしまった。
[バスターライフル[2] title:織倉宗 / cast:織倉宗 / author:やまぐう]
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