日曜の朝は気持ちよく晴れて、どこまでも青空が広がっている。
「‥‥‥あ?」
カーテン越しに爽やかな日差しが差し込む窓際のベッドで、最初に目を覚ましたのは浩之だった。
「‥‥‥う?」
声に気づいたのか、遅れてあかりがのそっと半身を起こす。
「あれ、浩之ちゃん、今、何時?」
「あー」
目を擦りながら、浩之は壁の時計を見上げた。
「‥‥‥じゅうじ」
「‥‥‥うわ‥‥‥お寝坊さんだね、思いっきり」
苦笑いのあかりが舌を出した。
今日は朝から出かける約束をしていた。
昨夜のうちに作った弁当はバスケットに詰められて台所に置いてある。
あかりはもう浩之と一緒に暮らしていたから、待ち合わせとかそういう必要はない。
だから後は、予定通りに起きて出かけるだけ、だったのだが。
その予定通りなら、もうそろそろ目的地に着いていたくらいの時刻になるまで‥‥‥結局、ふたりとも目を覚まさなかったのだった。
「どうしようか、浩之ちゃん」
「何が?」
「お弁当。もう、あるし」
「うーん‥‥‥」
浩之は困ったように頬を掻いた。
「詰めてあるのを居間で食うのもアレだよなあ」
あかりが頷く。
「そしたら、公園とか」
「んー、なんかちょっと遠いとこがいいよな」
あかりが少し首を傾げる。
「志保とかに見られると照れくさい」
「そうかな?」
「‥‥‥お前、何気に神経太そうだよな」
「‥‥‥そうかな?」
くしゃくしゃと乱暴に浩之があかりの髪を掻き回す。やーんとか言いながらあかりが頭を押さえるが、もとが寝起きだから前後の髪型も大差ない。
「まあ何だ。せっかくだから、取り敢えずちょっと出かけるか」
「うう‥‥‥そうだね」
前髪を一房摘んで恨めしげに見上げながら、あかりが頷く。
着替えを済ませたあかりが降りてきた頃には、時計はもう十一時近くを指していた。
「あかり」
「ん?」
「こういうの、何て言うんだっけ」
浩之が持ち上げたバスケットをしげしげと眺めて、あかりはまた小さく首を傾げる。
「こういうのって‥‥‥バスケット?」
「また力一杯撫でて欲しいかコラ」
「もう梳かした後だからダメーっ」
慌ててあかりは後ずさる。浩之が吹き出した。
「‥‥‥浩之ちゃんの意地悪っ」
「いや、そうじゃなくて。朝飯でも昼飯でもないくらいの中途半端な昼飯って、何か名前なかったっけ?」
「んー。えーと、ブランチのこと?」
「それだ」
浩之があかりの方に手を伸ばした。
反射的に頭を防御しようとするあかりの手を掴んで、すたすたと玄関へ歩を進める。
「これからも日曜はブランチにしよう。やっぱり、朝はだるい」
「んー‥‥‥時々はいいかもね」
「そんなこと言って、お前だって起きられなかったくせに」
「だって目覚まし止めたの浩之ちゃんでしょ? 私、あの目覚ましの止め方は知らないよ?」
「そんなの何だって一緒だろ」
そんな風に何やら楽しそうに言い合いながら‥‥‥全然予定通りではなかったが、ともかくも、浩之とあかりは手を繋いで出かけて行った。
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