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「‥‥‥今度の週末?」「そう」
 「図書館で一緒にお勉強?」
 「ああ」
 「北川くんが?」
 「うん」
 「誰と?」
 かっくん。‥‥‥項垂れた、というより、北川の首が身体の前に落ちた。
 「聞いてなかったのかよ美坂」
 「聞いてたけど、そこについてはまだ何も言ってないでしょ北川くんは」
 「だってわかるだろそこまで言えば普通は! 一から十まで説明すんのかよっ!」
 「そうね。詳細な説明を要求するわ」
 「ああああああああああああああああああああああああ」
 もどかしげに自分の髪を掻き回す。
 「だから俺と美坂が、今度の週末、図書館で」
 「ええ」
 「一緒に勉強するのはどうか、という提案をだな」
 「誰と誰が?」
 「だから俺と美坂で」
 「いつ?」
 「こんのやろー」
 握り締めた拳を震わせるが、それも結局、握った拳のやり場に困るだけのことだった。
 「それで、話は終わりかしら?」
 「終わってるワケねーだろっ!」
 「ならさっさと進めて欲しいんだけど。ええと、どこまで聞いたかしら」
 意地悪く、にやりっと香里は笑ってみせる。
 「ぐぬぬぬぬぬぬっ」
 「それとも、ギブアップかしら?」
 「いーや負けない負けるものかっ」
 「ふーん。ま、頑張りなさい」
 もういい加減諦めてしまいたい気持ちもまったくないではないのだが、冷たくあしらいにかかる香里の口調はあくまで他人ごとのようで、それがまた北川の苛立ちに油を注ぐ。
 爪の痕が残りそうなほど固く握られた北川の手を眺めながら、香里は足を組み直す。どうやら香里の方にも、そこで呻いている北川を置いて立ち去るつもりはないらしい。
 ‥‥‥本人同士はそんな風でも、傍から見ている分には、いいコンビといえばいいコンビ、なのかも知れない。
 
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