すべては、ただの一撃で仕留めるために。
ベランダに出しておいたボウルの水面には氷が張っている。
薄っぺらいその氷を素手でぺきぺきと割って、水鉄砲をボウルの中へ沈める。
小さな泡をたてながら、やがて水鉄砲は冷水で満たされる。
その水鉄砲を、音が立たないように、ボウルの中から引き上げる。
来るんだったら早く来い真琴。
苛々と頭の中で呟きながら、かじかんだ指先に吐息を当てる。
昨日の雪がまだ残ったままのベランダから自分の部屋の中をじっと覗き込んでいる。
壁に隠れて、部屋の中から存在を悟られないように。
いかにも俺がその中に丸くなっているかのように、布団の中には丸めた毛布を仕込んである。
その布団に向かうように、膝に置いた手首を固定する。
夜中に何か悪戯を仕掛けようとするに決まっている真琴を迎え撃つ準備はこれで万全。
だから、さっさと出てきてとっとと撃たれて、なんか得体の知れない悲鳴を上げながら自分の部屋に戻ってくれ。
いつまでも外にいたら‥‥‥寒いだろうがっ!
「祐一、風邪?」
「うー」
「こんな寒いのに窓開けて寝てるからだよ。わたしは学校行くけど、おとなしく寝てなきゃダメだよ?」
「うー」
狙撃失敗。
目標ハ、出現セズ。
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