SORAMIMI ON THE HILL.  


  

 便箋を開いてすぐに文意は諒解した。
 いや内容よりもむしろ、そのあんまりな簡潔さの方に、美汐は一瞬呆気にとられた。
 これまでに遭遇したことのないタイプの手紙だった。
 何となくベッドに寝転がって、これ以上ないほど簡素な便箋を窓越しの夕陽に透かしてみる。無論、そんなことをしたからといって、書いてある文字の他に秘密の何かが出てくるわけではないし、美汐もそれを期待したわけではない。ただ何となく、そうしてみただけだ。
「強いんですね」
 誰にともなく、ぽつりと呟く。
 強くあってくださいね、と美汐は言った。
 これからもずっと、強くはなれそうにない自分の、それは心からの願いだった。
 でも‥‥‥もしかしたら、相手が相沢祐一である限り、そんなことは特に言うまでもないことだったのかも知れない、と、今頃になって美汐は思う。
「あなたは、とても、強いんですね」
 呟く声がまた漏れる。
 目尻のあたりからベッドに向かって小さな何かが滑り降りていった。それが何だったかなんて美汐はわかりたくはなかった。
 だって私は泣いていない。泣いてなんかいない。
 だから私が涙を拭く必要なんてないと、自分にそう思い込ませるために必死で奥歯を噛み締めている美汐は、もしかしたら自分が思っているよりも、祐一のような強さへの憧れが強かったのかも知れない。
 今はもう、美汐自身の他には誰ひとり知る者のない美汐の約束は、果たされている、というには程遠い。わかっているから、その涙を拭く代わりに、美汐はのろのろと伸ばした手で枕元の写真立てを伏せる。
 いつでも写真の中から笑いかけてくれるあの子にだけは、こんな自分を‥‥‥約束を守れない自分を見られたくはなかった。



「秋子さん、ピクニックに行きましょう。名雪も」
 提案から結論に至るまでの所要時間は、
「了承」
 例によって、およそ一秒。
 ‥‥‥唐突で、しかもわけのわからない祐一の申し出には、さしもの名雪も首を捻ったが、そうやって首を捻っている間に話が片づいてしまっているのも、ここ水瀬家においては特に珍しいことではない。
「それで、いつですか?」
 知らないのに了承しちゃダメだよ、と名雪は思う。
「まだ決まってはいないんですけど。あと、何人で行くってのも、なるべく多くしたいなってくらいしか。それと、どうしてもひとり、連れて行きたい奴がいるんです。あの、俺たちと同じように、真琴みたいな奴と友達だった奴なんですけど」
「あら。それじゃ、行き先は」
「はい」
 祐一が頷くから、秋子はそれ以上は口に出さない。
「そうですか‥‥‥では、日取りが決まったら早めに教えてくださいね」
「はい、わかりました」
「お弁当たくさん用意しないといけませんね。どういう感じにしようかしら?」
 嬉しそうに何か口遊みながら、秋子は台所へ消える。
「さて、次は、と」
「あ、ゆ‥‥‥うー」
 呟きながら居間を出て行く祐一に結局声をかけそびれて、話題にも人の流れにも見事に置いて行かれた名雪は、所在なげにその場に座り込んだ。



 放課後、校舎の片隅。
 夕焼けの茜色に染め上げられたその廊下の端には、壁に寄りかかった祐一と香里の他に人影はない。
「本っ当、お人好しなのね」
 それが香里の第一声だった。
「悪いか?」
 いきなり開き直る祐一を前にして、香里は眉間の皺に指を当てる。
「悪いわよ。名雪はどうするの? その連れて行きたい子って女の子なんでしょ? きっと名雪、何か誤解してるわよ?」
「名雪が? 誤解? 何を?」
 この馬鹿朴念仁。
 ‥‥‥聞こえよがしな溜め息までは堪え切れなかったが、思ったことをそのまま口に出すのと、舌を出してやりたくなるのは、どうにか堪えることに成功する。
「で? どうしてあたしにだけ、個別にそういう話が出るのかしら?」
「それなんだが」
 他に誰がいるわけでもないのに、祐一は声を潜めた。
「香里、本当は妹がいるだろ? 実は俺は栞とも結構仲がいいんだが」
「いないわよ」
「隠さなくていいって」
「だからいないって言ってるじゃない」
 むきになって食い下がる香里を、
「いいから聞いてくれ香里」
 宥めるように祐一は言う。
「栞は、お姉ちゃんと仲よくなりたいんだ。それにどうも、栞だって薄々わかってはいるみたいだし。いつまで一緒にいられるかわかんないんだろ? なのにお姉ちゃんがわざと遠ざけるような真似してると‥‥‥だから、ああ、結局、どっちにしても辛いんだよ、残される方は」
 一言ごとに次の言葉を探りながら、祐一は話を続ける。
「すまん。言い方が悪い。自分でももどかしくてしょうがないけど、とにかく‥‥‥えっと、香里が妹のこと嫌いだからって、それで栞の寿命が延びるわけじゃない。好きでいたって延びないとしても、それは結局、どっちみち延びないんだとしたら、悲しい思い出がたくさんあるより、楽しい思い出がいっぱいある方が、香里も栞も嬉しいに決まってるだろ? それはわかるよな?」
「‥‥‥わかんない。全っ然、わかんないわよ」
 吐き捨てるように香里は呟いた。
 本当はわかっていることは、窓枠から目を逸らせない‥‥‥祐一を正視することができない香里の仕種を見ていれば、祐一でなくてもお見通し、だったかも知れない。
「だからさ、栞は香里から誘ってやってくれ。あ、言っとくけど、両方とも最初から頭数に入ってるからな。来ないのは困るぞ」
「私、行かないわよ? それに私に妹なんていない」
 頑に頷くことを拒む香里の肩に、祐一はその手を置いた。さらに声を潜める。
「あのさ。俺たちと真琴は楽しそうに見えたかも知れないけど、あれでも俺たちは結構後悔してるんだ。もっと、もっともっと、嬉しいことも楽しいことも、俺たちは積み重ねられた筈なのに‥‥‥このままじゃ、本当は今がチャンスだったんだって香里が気づくのは栞がいなくなってから、なんてことになっちまうかも知れない。それじゃ悲しいだろ? そんな想いは俺たちだけで終わりにしたい。終わりにできないとしても、自分にできることをやらなかったせいで泣いてる誰かなんて俺はもう絶対に見たくない。だから」
 そこで突然、香里の肩から手を離した祐一は、香里を残してすたすたと去ってしまう。
「待ってるからな」
 祐一が最後に残した言葉の小さな残響が、宵闇の青に染まり始めた廊下のどこかに染み込んで、跡形もなく消えてしまった頃。
「ったく‥‥‥栞にまで手を出してるなんて‥‥‥あんの、馬鹿朴念仁‥‥‥」
 ようやく校舎内に視線を戻すことに成功した香里には、もうとっくに消えてしまった祐一の背中に向かってそんな憎まれ口を叩くくらいが精一杯で。
 握った拳の弱々しさは、誰よりも香里自身がいちばんよく知っていた。



『まあ、北川は当然来るよな? 別に聞かないけど』
 階下の受話器に向かって喋る祐一の声は、名雪の部屋にも僅かに届いている。
 けろぴーのぬいぐるみを抱き直して、名雪はベッドの縁にぶら下がった両足を揺すった。頑丈な木造りのベッドは軋む音ひとつすら立てることなく、名雪が動くに任せている。
「そりゃ、真琴ちゃんのことは大切だよ。真琴ちゃんみたいな子とお友達だった人だって、真琴ちゃんがいなくなって私たちだってあんなに悲しかったんだから、その人の悲しい気持ちはすっごくよくわかるつもりだよ」
 小さな呟きは、けろぴー以外の誰にも聞こえていない。
「だけど、その人と祐一だけのことなら、お母さんや私や、みんなは巻き込まないで欲しいよ。デートだったら」
 デートだったら、祐一とその人と、ふたりだけで行って欲しいよ。
 けろぴーにしか聞こえていない。わかってはいても、名雪にはその台詞の続きを声に出すことができない。
「うー」
 思ったことを思うように言えないもどかしさに、名雪は唸りながらベッドの上を転げ回る。意外と豊かな名雪の胸に押し潰されて、時折すーっと微かな音をたてて中の空気を吐き出しながら、けろぴーはふにふにと形を変え続けた。それはけろぴーから名雪に向けて発された無言の抗議のようでもあったし、八つ当たりも同然のその行動を笑って赦す優しさのようでもあった。
「私、どうしていいかわからないよ‥‥‥このままだと私‥‥‥すごく‥‥‥自分で嫌になるくらい、嫌な私になっちゃいそうだよ‥‥‥助けてよ‥‥‥お願いだよ‥‥‥助けてよ祐一‥‥‥」
 縋るようなその声も、けろぴー以外の誰にも聞こえていない。‥‥‥本当はその言葉がいちばん聞こえていて欲しい、けろぴーではない誰かが、受話器相手に喋り続ける声も、まだしばらくは止みそうになかった。



 吹く風がこの冷たさで、昼休みの中庭が閑散としているのは当たり前だ。アイスクリームが恋しい季節でないことだけは、誰にとっても確かである、筈、だが。
「ひくにっく、れふか?」
 バニラのアイスクリームを口元に運んだ匙の動きが止まる。チャチな木の匙を咥えたまま向き直った栞が祐一に聞き返した言葉は、そのせいか、発音がやや不明瞭だった。
「ああ。栞を誘えって香里には言ったんだけど、栞が知らないってことは‥‥‥いい加減意固地だな、香里も」
「お姉ちゃんのことを悪く言わないでください」
 栞は途端に、少しむっとした顔をする。
「ああ、悪い。それでな」
「はい」
「結局、最後まで香里は栞に声をかけない、という可能性があるから」
「はい」
「その時は栞だけでも出て来ちゃえ、と思ってるんだが」
「んー‥‥‥」
 少し、考え込んでから。
「でも、お姉ちゃん抜きは私も嫌ですから」
 栞は笑いながら首を横に振った。
 どうして栞にはこんな風に、誰よりも幸せそうに笑うことができるのだろう。
 その笑顔のあまりの眩しさに、祐一でさえ、時々そこから目を背けてしまいたくなったりもする。
 祐一には、香里の気持ちはとてもよくわかっていた。
 今の香里と祐一に差があるとすれば、それは、まだ失っていないか、もう失ってしまったか、その点だけだ‥‥‥そしてその差が、祐一を駆り立てる。
 天野のことも栞のことも祐一個人にとっては他人事に違いないが、それでも祐一は、見ているだけで痛々しさに身を引き千切られそうな幾つかの悲しい気持ちから、今は絶対に目を逸らさない、と決めていた。
 とはいっても、
「そうか。誘ってくれるといいな」
 そんなことの他に、祐一から栞に返す言葉がないのも、また事実ではあるのだが。
「大丈夫です。私も誘っちゃいますから」
 相変わらずの笑顔のままで、栞は頷いた。



「お母さん」
「何?」
「私、行きたくないよ」
 そんな風に、名雪は話を切り出した。
 夕方。祐一はまだ家に戻っていない。今は、台所の中をくるくると歩き回りながら、秋子と名雪がふたりで夕食の支度をしていた。
「そう? 私は楽しみだけど」
 秋子はそう言って笑う。
「だってまた祐一とそんな丘なんか行って、また真琴ちゃんみたいに狐さん見つけたら」
「また一緒に暮らせばいいじゃない?」
 秋子の答えは、
「そんなことして! そんな‥‥‥ことして、また真琴ちゃんみたいにいなくなっちゃったら」
「またみんなで泣けばいいじゃない?」
 あくまでも簡単で明瞭だった。
「お母さんっ!」
「あのね名雪」
 家庭用にしては火の勢いが強いガス台の上でフライパンを器用に煽りながら、振り向きもせずに秋子は言う。
「出会いがあれば別れはあるものよ。生きているものにも死んでしまう日は必ず来るわ。それは悲しいけれど、仕方のないことだもの。でも、後で悲しい思いをするから、だから大切なものなんて何もない方がいい、とは私は思わないの。それよりも、たくさんの人と、嬉しい思い出をたくさん作りたい。その方が私も嬉しいもの」
 それは、嬉しいことも悲しいこともたくさん経験してきた大人だからこそ、の言葉なのかも知れない。
「それに、本当はそういうことじゃないでしょう? 名雪が心配していることは」
「あ‥‥‥うー‥‥‥えっと‥‥‥」
 突如図星を指された名雪の動きが止まる。
「もう少しだけ待ってみたらどうかしら? 祐一さんが今はいちばん大切だと思っている何かが、きちんと全部終わるまでは」
 もう少しだけ。
 だって、もう待っているのに。名雪は思う。
 七年も待っているのに。ずっと待っているのに。‥‥‥まだ待つなんて。
「嫌だよ! だって私は恐いんだよ! そりゃ私だって、今は別に祐一とつきあってるとか、そういう約束があるわけじゃないけど‥‥‥でも何だか、他の誰かのために一生懸命な祐一見てると、私を置いて祐一だけどこか遠いところへ行っちゃいそうで‥‥‥今度はもう‥‥‥いくら待っても、私のところへは、もう二度と帰ってきてくれないかも知れなくてっ!」
 とうとう言ってしまった。
 口に出してはいけないと、名雪自身がずっと名雪に禁じていた言葉を。
「誰にも優しくしないでって、他の誰かじゃなくて、最初に私を助けてよって、いつも気がつくと、そういうこと‥‥‥そういうこと、祐一に、言いたくなってて」
 あっという間にトーンダウンしていく声に、しゃくりあげる音が混じる。
「ねえ、お母さん、今の私きっと可愛くないよ‥‥‥真琴ちゃんのこととか、真琴ちゃんみたいな子と一緒で、きっと私たちと同じくらい痛かった人のこととか、本当にどうでもよくなんてないのに、でもそういうことよりも、祐一ひとりの方が大事だなんて思っちゃう‥‥‥そんなの酷い‥‥‥こんな我儘な私なんか、絶対、可愛くなんかないよ‥‥‥」
 気になって秋子が振り返ると、項垂れたまま肩を震わせる名雪の背中が見えた。
「どうしようお母さん、私、恐いよ‥‥‥祐一に嫌われたら嫌だよ‥‥‥そんなの嫌だよ‥‥‥置いてかないでよ祐一‥‥‥ずっと、私と、ここにいてよぉ‥‥‥」
 確かに名雪はそこに立っているのに。
 蚊の鳴くような小さな声で呟くその背中も、秋子は何だかひどく小さいもののように感じていた。



 実は結構叩いても壊れなさそうなあの名雪が、珍しく体調不良で学校を欠席。重なる時には重なるものなのか、もう昼休みになったのに、今日は北川もまだ学校に顔を出していなかった。
 菓子パンの袋とレモンティのパックを面倒そうにぶら下げた香里が、レジを通過した祐一のトレイを覗き込む。
「随分と豪勢なのね」
「ああ、なんか昨夜は料理に失敗したとかで、夕食が妙に少なくてさ。今朝になったら名雪が休みで連絡がどうだとかバタバタやってたら、朝飯も結局食いそびれたし‥‥‥なんか腹減っちゃって」
 目の前のトレイに載ったカレーライスときつねうどん各一杯ずつにも、事情がそういうことであれば納得は行く。香里は頷いて‥‥‥そして、ふと首を傾げた。
「でも夕食って名雪のおばさんが作るんでしょ? 料理は上手いって聞いてたけど、そういうこともあるの?」
「いや、そうなる確率は多分ものすごく低いと思う。実際立ち会っといてあれこれ言うのも何だけど、俺自身、未だに信じられないくらいだし」
「そうなんでしょうね。そんな話、今まで私も名雪からは聞いたことなかったもの」
 ちょうどその時、食堂の向こうの方で席がふたつ空いた。すかさずそこに潜り込み、ふたりは席につく。
 ふと見ると、相席になった隣の女の子ふたりは‥‥‥自分の牛丼の丼からごそっと肉を箸で摘んで、テーブルの向かいに位置する相手の丼に盛る、という謎の行動を互いにずっと繰り返していた。
 最初に渡された塊が往復してるだけ、のように見えるのだが、そんなことでも当事者同士は楽しそうなので、祐一は何も言わず、取り敢えずその様子を横目で眺めていることにする。と。
「‥‥‥聞いてくれなくていいけど」
 香里のそんな言葉が、不意に祐一を現実に引き戻した。
「お姉ちゃん、私に何か隠してない? って聞かれたわ」
「ん? 妹なんて‥‥‥すまん。やめとく」
「何とでも言えばいいわ」
 隣のやりとりを眺めている、ということを敢えて祐一にアピールするかのように、往復する肉をじっと見つめたままで香里は言葉を続ける。
「相沢くんは、あの子が聞きたがってるのはどっちのことだと思う? 相沢くんがこの間言ってたピクニックか何かのことと、もうひとつ」
「もうひとつ?」
 香里の口からさりげなく投下された爆弾は、
「恐らく、次の誕生日までは生きられない、って‥‥‥この間、医者が家族に言ったこと」
 予定通り、香里と祐一の間で巨大な爆風を巻き起こす。
 祐一は思わず箸を取り落とした。それはからからとテーブルの上を転がって、ちょうど相手の丼に肉を盛る番だったらしい、長い髪を首の後ろでひとつに束ねた女の子のトレイに当たって止まった。
「?」
 その女の子は、何を言うでも何をするでもなく、ただ、祐一の顔を見つめている。
「あ、すみません」
 慌てて祐一が箸を取り直しても、その姿勢は何も変わらなかった。何だか、自分から目を逸らしてはいけないような気がしてきて、掴んだ箸を右手に握ったまま、祐一もその女の子を見つめる。
「何をやっているの?」
 呆れたような香里の声がふたりの耳に届いたのは、それからしばらく経ってからだった。何かの呪縛が解けたかのように、祐一とその女の子は同時に正面に向き直る。
「あ‥‥‥」
 その女の子が小さく声をあげたのは、自分の丼に乗せられた肉が、ほとんど倍くらいまで増えていたからだった。向かいの女の子があははーと笑っていた。
 そして、その女の子が報復行動に出ようとしたちょうどその時、無情にも、昼休みの終わりを告げる鐘の音が聞こえてきた。
 顔を見合わせた四人は一様に照れ笑いのような表情を浮かべると、取り敢えず、それぞれの目前に残ったままの昼食を消費することに専念した。



『‥‥‥意味がよくわからない』
 電話の向こうで舞が呟いた。
「えっとほら、お昼にお隣だった人たち。舞、憶えてる?」
『‥‥‥ん』
 慣れている佐祐理はお構いなしに話を続けるが、舞の声は相変わらず消え入りそうに遠い。
「それでね、その人からさっき電話があって、今度ピクニックに行こうって。舞はどうする?」
『‥‥‥佐祐理は』
「佐祐理はね、舞が行くなら行こうかなって。明日学校でお返事します、って言っておいたよ」
『‥‥‥どうして』
「ん?」
『‥‥‥どうして、佐祐理の電話番号を知ってるの。それに、お昼にちょっと会っただけの人が、どうして急に、一緒にピクニックなの』
「どうしてだろうね?」
 電話番号は佐祐理が自分で教えたのだが、どうして急にピクニックなのか、は佐祐理も知らなかった。
 時々、舞はとても鋭い。笑いながら、電話のこちらで佐祐理も首を傾げる。
「舞は祐一さんのこと嫌い?」
『‥‥‥まだわからない。嫌いじゃないと思う。それに』
「それに?」
『‥‥‥どこかで‥‥‥何でもない』
 何を言い淀んだのかは佐祐理にはわからなかったが、舞が言わずにおいた何かを敢えて詮索するようなこともしなかった。
「お弁当いっぱい作って行こうねー」
『‥‥‥佐祐理、本当はもう行く気でいる』
「あははー。わかっちゃった?」
『‥‥‥わかる』
 誘われる理由は確かによく知らなかったが、舞が嫌だと言わない限り、佐祐理は祐一の話に乗るつもりでいた。
 祐一と佐祐理の、見た目ではわからないどこかが、とても似ているように感じた‥‥‥佐祐理の方には、その他に特別な理由なんて何もなかった。きっと祐一さんにも、特別な理由なんてなかったんだろうなあ、と思う。何となく、そうすることがお互いに自然だった。それだけで、今はいいような気がしている。
『‥‥‥佐祐理が行くなら、私も行く』
「そしたら、佐祐理と舞もピクニック行くって明日祐一さんに伝えようね。‥‥‥あ。舞、もうひとつ」
『‥‥‥何』
「麦わら帽子って持ってたっけ?」
『‥‥‥うさぎさんしか持ってない』
 うさぎさんというのは多分、うさぎさんの耳がついたカチューシャのことだろう。
 とにかく、麦わら帽子でないことは明白だった。
「そっかー。そしたらもうひとつは、週末までに佐祐理の家から探しておくね」
『‥‥‥どうして』
 怪訝そうに舞が声を潜めた。遠い声がもっと遠くなる。
「ん?」
『‥‥‥どうして、麦わら帽子』
「いいお天気になりそうだから、だって」
『‥‥‥どうして、お天気がわかるの』
 電話の向こうで「どうして」を繰り返す舞は、何だかお母さんを質問攻めにする小さい子供のようだった。
「あははー。どうしてだろうね?」
 笑いながら、佐祐理はカーテンを少し捲って、窓の外に広がる夜空を見上げる。
 雲ひとつない空だ。この天気が今度の週末までずっと続くとしたら、麦わら帽子は確かに必要だ、と思う。
「どうしてだろうね?」
 それはきっと、思い出がお日様と一緒にあるからだよ。
 どうしてそう思うのか、佐祐理にもよくわからなかったから‥‥‥思ったことを言わない代わりに、佐祐理は「どうしてだろうね」を繰り返した。



 あの場の話は何となくうやむやになってしまったが、喋ったことは嘘でも冗談でもない。
 だから、今は他人の心配してるような場合じゃない、と香里は思う。‥‥‥相沢くんやその女の子がどんな辛い目に遭ってきたかはわからないけど、取り敢えず今、私たちは自分のことで精一杯なんだから、と。
 自分の部屋で机に頬杖を突いていた香里の視界を、不意に、何かが塞いだ。
「だーれだ?」
 わからない筈がない。
「他に誰がいるのよ」
 つまらなそうに呟きながら香里が振り返ると、赤い制服には不似合いな、やけに大きな麦わら帽子を被った栞がそこにいる。机の上で何か柔らかいものが倒れるような音がした。もう一度机に向き直ると、そこに転がっているのも麦わら帽子だった。
「帽子?」
「きっと晴れるから、その日は全員麦わら帽子。それも決まりだって」
 頭に乗っていた大きな麦わら帽子を両手で香里に差し出しながら、栞が笑う。
「何の?」
「ピクニック」
「呆れた‥‥‥本当に行く気でいたわけ?」
 香里は深く溜め息をつく。
「え、お姉ちゃんは? 行かないの?」
「行かないわよ」
「えー?」
 いかにも不満そうな声。
「楽しみにしてたんだけどな」
「それどころじゃないでしょ」
「何が?」
「え‥‥‥」
 何気なく聞き返されて、しまった、と香里は思う。
 何が「それどころじゃない」のかなんて、当の栞相手に言えるわけがなかった。
「普通に言えないようなことなんでしょ? 私はもうそんなに長くない、とか」
 自分自身への死の宣告にも等しい言葉を、まるで何でもないことのように、栞は突然口にする。それに対して、咄嗟に嘘をつくことも誤魔化すこともできなかった自分の不器用さがもどかしくて、香里は思わず唇を噛んだ‥‥‥もう遅い。何も言えなかった自分をもう見せてしまった。何をどう言い繕ったところで、今更、言い訳にもならない。
「やっぱりそうなんだ。何となく、そうじゃないかって思ってたんだ」
 得心が行ったように、ぽんと手を叩きながら栞は頷く。
「止めてよ‥‥‥」
 呟いた香里の声はやけに低くて小さかった。
「ん?」
「もう止めてよ! 笑わないでよ! どうしてそんなに嬉しそうにしてるのよ! もう長くないって、長くないのはあなたのことじゃない! 冗談じゃないわよ! それで栞にそんな悟り澄ましたみたいな顔されてたら‥‥‥お姉ちゃんなんて」
「お、お姉ちゃん?」
「お姉ちゃんなんて何の役にも立ってないじゃない! こんなあたしなんて、いてもいなくても一緒じゃない! あたしなんて、あたしなんて要らないじゃないっ!」
 顔を上げた香里は。
「何よ‥‥‥あたしが泣いたって‥‥‥しょうがないじゃない‥‥‥っ‥‥‥」
 小刻みに肩を震わせながら、泣いていた。
「お姉ちゃんは、要らなくなんかないよ」
 机に伏せてしまった香里の肩に栞が手を置いた。
「お姉ちゃんがいてくれるから、私は笑っていられるんだよ。ずっと笑っているためにはちょっと頑張らないといけなかったけど、それは、私にはお姉ちゃんがいるから、だから、今まで、何とか」
 不意に、栞の声が滲んだ。
「あれ‥‥‥? おかしいな。私、どうして」
 頬を伝った何かの正体を、栞は自分の指で確かめる。
 目蓋から溢れた、透明な、生温い雫。それは。
「どうして泣いちゃうんだろう‥‥‥もう泣かないって、笑っていようって‥‥‥私、決めたのに‥‥‥」
「馬鹿ね」
 まるでひったくるように、香里は栞の頭を胸に抱いた。
「こんな時くらい、泣いてくれなきゃあたしがみっともないじゃない。頼り甲斐のないお姉ちゃんで悪かったわね」
 こんな時まで憎まれ口を叩こうとするお姉ちゃんの背中に、やっぱり笑おうとして失敗した妹が腕を回す。
 ふたりはずっと、そうして抱き合ったまま泣き続けた。



 祐一の電話はその晩も長かった。電話の相手がひとりでないこともわかっていた。何かが決まりかけている。そういう気がした。例えば、ピクニックの日付とか。しかし今の名雪には、その先を確かめる勇気はない。
 誰かが階段を上がってくる音がした。きっと祐一だと名雪は思った。真っ暗な自分の部屋の中で、膝を抱えた名雪が息を潜める。足音は二階の廊下に上がってきた。手加減なしで抱きしめられたけろぴーのぬいぐるみが苦しげに息を吐く。どう考えても閉め切られた部屋の外まで響いている筈もない、そんな微かな音でさえも、今は何だかとても大きな音だったように思えて、びくりと肩を震わせた名雪はベッドの上でさらに縮こまってしまう。
 こんこん。ドアをノックする音が聞こえた。
「‥‥‥名雪?」
 いつもの祐一らしくない、控えめな声が聞こえた。
「寝てるのか? 名雪?」
 諦めるにせよ踏み込むにせよ、普段ならこんなに長く躊躇したりしない祐一が、今夜に限ってはまだドアの前で逡巡していた。
 名雪は必死で耳を塞いで、ベッドの上で死んだ真似をする。つきあわされたけろぴーが不満そうに顔を歪めた。
「何かあったのかな? 言ってくれりゃいいのになあ」
 言えちゃうようなことならこんなに苦しくないよ。
 口に出せない名雪はもぞもぞと身悶えするしかない。
「名雪、ちょっと入るぞ」
 しかも祐一は踏み込むことに決めたらしかった。
「ダメだよ」
 思わず名雪は呟いていた。‥‥‥呟いてから慌てて口を両手で抑えるが、もう遅い。
「起きてるのか?」
「来ちゃダメ。来ないでっ」
 今更死んだ真似を続ける意味もない。静かに近づいてくる足音に向かって名雪は言った。それでも足音は止まらない。とうとう祐一は、名雪が転がったベッドの上にぽすっと腰を降ろす。
「あのさ」
「やだ。聞かない」
「聞くのは俺だ」
「へ?」
「何か言いたいことがあるんだろ?」
「べっ‥‥‥別に、何もないよ」
「そうか? じゃあ明日の朝はちゃんと起きてこいよ」
「でも、だって私、調子が悪いんだよ」
「そうなのか?」
「なんかその、ええと、頭が痛かったりとか、身体がだるかったりとか、それと」
「うん」
「だから明日も多分ダメだと思うんだけど、ダメかな?」
「ダメだな」
「う〜」
 いつものようにズレているが、しかしそれは、いつもの会話ではない。油の切れかけた歯車に、油の代わりに砂粒を噛ませたような、そのぎこちない空気の裏側にあるものが、祐一にも名雪にも何となくはわかっている。
 つまり名雪は何かを隠していて、何かを隠していることを祐一は知っている、ということを。
「そのままお前がそうしてると秋子さんが変な心配するだろ? 内緒だけどな、秋子さん一日中俺のこと見てたんだよ。話を聞いてやって欲しいんです、って顔して。でもそんなこと‥‥‥秋子さん大人だからさ、当人同士の話ですから、とか考えたら、心配してても口に出しては言わないだろ?」
 名雪のあたりで音がした。多分身体を起したのだろうが、真っ暗だから祐一には見えていない。
「そうだね。お母さんに心配かけちゃいけないね」
 聞こえてくるのは声ばかりだ。
「もうひとつ。俺も心配する」
「‥‥‥え?」
 見えていないのに、名雪が息を呑むのが祐一にもわかった。
「なんだ、俺が心配してるのは意外なのか?」
「ええと‥‥‥うん。意外だよ」
「あのな」
「だって祐一、私なんかより真琴ちゃんの方が心配でしょ? 天野さんの方が心配でしょ? 栞ちゃんの方が心配でしょ? だから、私の心配なんかしてる暇があったら、そっちの心配‥‥‥して、あげて欲しいよ‥‥‥」
 名雪の言葉が急に失速した。すぐ側の暗闇の中から、ごそごそと衣擦れの音がする。
「名雪。本当に、そう思ってるのか?」
 音を頼りに祐一が手を伸ばした。想像通りそこにあった名雪の手を握る。
「っ‥‥‥嘘。本当は嘘‥‥‥」
「うん」
「ごめん祐一‥‥‥私、嫌な子だから‥‥‥私の心配してって‥‥‥私を助けて、って本当は思ってる‥‥‥他の誰かなんか全部置いてけぼりで私の心配ばっかりしてるような、そんな冷たい祐一なんか嫌だって思ってるくせに、でもやっぱり、私のことだけ助けて欲しいって、別のどこかでは思ってる‥‥‥ごめんね祐一‥‥‥」
「そうか」
 不意に、握った手を祐一が引っ張る。
「きゃっ!」
 ベッドから引き抜かれた名雪の身体が祐一の腕の中に収まった。祐一と名雪の間で潰されてしまったけろぴーが、また僅かな悲鳴をあげる。
「ゆっ‥‥‥?」
「名雪ごめん。俺も悪かった。そんなこと名雪には言わなくても伝わってるって、俺、勝手にずっと思ってた」
「祐一?」
「こんなこと何度も言わないけど、俺は名雪が好きだ」
「うそ‥‥‥」
 名雪が首を横に振った。
 長い髪が、背中にまわした祐一の両手を撫でた。
「真琴がああで、同じような痛みの中からまだ抜け出せないでいる奴のことを放ってはおけない。大事な何かをもうなくしちゃった俺には、なくなりそうな栞のことも放ってはおけない。だけど、俺が名雪を大切に思ってることは、そういうのとは違うんだ‥‥‥言わないとわかんないことってあるんだな」
「うそ‥‥‥うそ‥‥‥」
「嘘なんかじゃない。全部終われば俺はここに帰ってくる。それは名雪がいるからだ。それとも、俺じゃ嫌か?」
 名雪は何度も首を横に振った。
 短い前髪が祐一の頬を掠める。
「嫌だよ」
「名雪‥‥‥」
 けろぴーだけが、すとんとベッドに落ちた。
「一度だけなんて不安だよ。何度も言わないなんて、そんなの恐くて嫌だよ。だから祐一‥‥‥言って。何度も、何度でも言って。ずっと、ずーっと繰り返して。私が今夜、眠れるまで‥‥‥お願い、祐一‥‥‥」
 真っ暗い部屋の中でひとつに重なったふたつの影は、その晩はずっと、離れることはなかった。



「さて、これで最後が釣れた、と」
「あー。釣れたって何だよー」
 祐一の手にあるたい焼きを追いかけて、あゆがぶんぶんと腕を振り回している。確かに、誰がどう見ても「釣れた」としか表現しようのないシチュエーションではある。
「全員揃ったんですか?」
「いえ、後は主賓ですが」
「そうですか」
 秋子は輪のように並んだ一同を見まわしてみた。
 秋子の傍らには、大きなバスケットを両手で提げた名雪がいる。いつも通り笑っている栞と、いつも通りの仏頂面の香里が並んでいる。隣の北川も麦わら帽子を被って立っている。その横には、名雪の手元のバスケットといい勝負の大きな風呂敷包みを提げてにこやかに笑っている女の子と、無表情な女の子。ついこの間食堂で知り合った倉田先輩と川澄先輩、と祐一は秋子たちに紹介した。その隣、たい焼きひとつで祐一にいいように遊ばれているのがあゆだ。
 倉田先輩と呼ばれた女の子が、風呂敷包みをくいくいと動かしながら秋子に笑いかける。聞いていたより何人も多かったが、お弁当の心配はしなくてもよさそうね、と秋子は思う。
「でも祐一くん、ボク帽子ないよ?」
「心配するな。ここにある」
 不意に祐一が、北川の頭から麦わら帽子を掠め取った。
「あ! 何しやがる相沢っ」
 麦わら帽子はあっという間にあゆの手に渡る。
「えへへっ。もーらったっ!」
「こら待て」
 渡された麦わら帽子を被ったあゆが、突然辺りをでたらめに走り始めた。北川が追いかけるからだ。どさくさ紛れに祐一の手からたい焼きをもぎ取り、もぐもぐと頬張りながらにしては結構な速さで駆け回る。
「あ。それで祐一、天野さんはいつ来るの?」
 今思い出したように、名雪が祐一に訊ねた。
「来ればもうすぐだと思うけどな」
「来ればって‥‥‥祐一、ちゃんと約束してないの?」
「ああ。今までみんなに隠してたんだが、実は、そこんとこだけギャンブルだ。一応電話で話してはおいたけど、本当に来るかどうかは俺にもわからない」
「‥‥‥何よそれ」
 香里が頭を抱えるのとほぼ同時に。
「お、来た」
 祐一が手を振る方へ全員の視線が集中する。
 約束通り麦わら帽子を被った美汐が、こちらへ向かって歩きながら、照れくさそうに小さく手を振った。
「こんにちは。でも、なんでこんなに大勢なんですか?」
 輪に加わるなり、美汐が首を傾げる。
「俺たちだけだなんて言ってないだろ別に」
「それはまあ、そうですけど」
「ふたりっきりは別の機会にぐあっ」
 言い切れなかったのは、名雪の肘が見事に祐一の鳩尾を捉えたからだった。
「ところで天野さん」
「はい?」
 栞が美汐に声をかけた。
「祐一さんからは何て言って誘われたんですか?」
「私が、ですか?」
「はい」
 数秒、美汐は空を見上げた。
 それは、麦わら帽子がとてもよく似合う、澄み渡った晴れの日の空だった。
「ええと」
 鞄に手を入れた美汐はすぐに手紙を取り出す。まるで、その手紙以外には何も入っていなかったかのように。
「これです」
 取り出されたのは、あまりの簡潔さに美汐を絶句させた、あの便箋だった。
 祐一以外の、そこにいた全員が便箋を覗き込む。
「何これ? なんか暗号みたいだね」
 いつの間にか戻ってきたあゆが言う。北川は向こうにへたり込んでいるが、あゆは息も切らしていない。
「んー。全然わかんないね」
 名雪が頷く。
「そうですか? 私にはとてもよくわかったんですけど。急に麦わら帽子がどうとか言い出した理由、とか」
 どうやら、意味がわかるのは美汐だけだったらしい。
「どうして? お天気がいいから、じゃないの?」
 舞が聞き返す。
「きっと、もう二度と声を聞き逃さないためですよ。麦わら帽子はよく聞こえますから。それに」
 振り返ると、祐一はまだ苦しげに鳩尾をさすっている。
 美汐は小さく肩を竦める。
「思い出はお日様と一緒にあるから、ですか?」
 不意に佐祐理がそんなことを言い、一同は意外そうに佐祐理を見つめる。相変わらずあははーと笑っている佐祐理は、その人好きのする笑顔の裏にあるものを決して他人に見せはしない。
「あたしたちにわかんなくたって、受け取った人がわかってくれてりゃ問題ないわよ。揃ったなら行きましょ?」
 何か言いたそうな祐一を差し置いて香里が告げる。
 ‥‥‥彼らのピクニックが始まろうしていた。



今度、あの場所で俺たちの思い出話をしよう。
俺たちが大好きだったあいつらと俺たちのために。
日程とかはそのうち連絡する。

相沢 祐一

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