「祐一、落ち着いて聞いてね?」
「何だよ急に改まって?」
「あのね? あの‥‥‥この間から、ない、みたいなの」
「ない? って何が? 目覚まし時計だったら、この間借りたのがそこの枕のとこに」
「そうじゃなくて」
「違うのか? 後はえーと、ああ、財布から五百円玉が一枚消えてるとかか? それだったら」
「どうして祐一がそんなこと知ってるの?」
「うわ薮蛇だったか。ええとそれはつまりだな‥‥‥しまった、今更真琴が抜いてたなんて言ったって説得力ないし」
「っていうか、そんな細かい話は今じゃなくていいよ。それより祐一、私」
「だから何がないんだ?」
「その、毎月のね」
「ああ」
「月に一回‥‥‥ほら、女の子は、あるじゃない」
「陸上部のミーティング?」
「それ女の子とか関係ないし。‥‥‥っていうか祐一、本当はわかってない?」
「すまん。何となくはわかってる」
「からかうなんてひどいよ祐一」
「だからごめん。悪かった。ちょっと動揺しただけだ。それで、秋子さんは?」
「んー、何となくは気づいてるみたい」
「そうか。まあ‥‥‥じゃあ、ちょっと挨拶してくるか」
「何の?」
「お嬢さんを僕にください、だ。‥‥‥その前に、名雪」
「はっ、はい」
「後悔してないか? その、まだ就職もしてないのに、俺たち、こんなことになって」
「祐一は、後悔してる?」
「まだわかんないな。正直、不安だな、とは思ってるけど。でも、でもそれは不安であって、後悔とか、そんなのとは違うと思う」
「それなら、祐一が後悔したりとかしてないなら、私は大丈夫だよ。ちょっと早かったかなあ、とは私も思うけど、これは私の望んだことでもあるから」
「そうか。それじゃ行ってこようか。秋子さんのとこに」
「ん。そうだね」
「了承」
「速っ!」
「こんなことまで一秒だよ」
「でも‥‥‥了承、で私はいいのだけれど、祐一さんのご両親にもきちんとお話しないとね。私だけが許せばいいということではないわ」
「ええ。それはそのうち」
「それともうひとつ」
「え?」
「私がこんなことを言うのもおかしいのかも知れないけれど‥‥‥祐一さん、あゆちゃんとのことは、本当にそれでいいの?」
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