reason.[26690106]  


  

 例えば、自分はどういう人間であるか、といったことに思いを致すとして。
「‥‥‥あー、何というか」
 この世に起きる大概のことは余裕で受け流してしまえるタイプであることについては自他共に異論の余地がない千堂伊織であるのだが、
「暫く見ないうちに、随分と狸っぽいビジュアルになったな、ツキ」
 そんな前生徒会長ですら、ついうっかりそう呟いてしまうくらいには、彼らの眼前にある光景は珍妙であった。
「『狸っぽい』などという問題ではないだろう。これは『狸そのもの』だ」
 冷徹極まる征一郎の突っ込みも、この学院の敷地内で炸裂するのは実に半年ぶりだ。
「そりゃそうだけどさ。しかしこれ、悠木姉が見たら何て言うやら」
「話くらいは寮長から聞いているんじゃないのか。支倉との個人的な付き合いもあることだし」
「それはわからないと思うが‥‥‥ま、いいさ。悠木姉だって十中八九来るだろう。後で会うかも知れないんだし、感想はその時にでもゆっくり聞くことにして」
 振り返った伊織は、本敷地の方向へ視線を向ける。
「さ、行こう征。まずは陣中見舞だ」
「うむ」



 ドアノブに手が掛かるくらいの距離まで来ると、
『時間過ぎてもオチ研が退かなくて、講堂の進行がちょっと押してるって言ってるわ』
『わかった。ちょっと行って調整してくる』
『あ、待ってください支倉先輩! 今、五年生のクラスから、暗幕が破れてしまったという連絡が』
 重くて分厚い監督生室の扉越しでも、ある程度は、内部の戦況が漏れ聞こえてくる。
 まさに今‥‥‥文化祭二日目、一般開放日が開幕してから数時間。
 この狭い部屋ひとつで学院全敷地のトラブルに立ち向かう生徒会役員たちの戦争は、今年もやはり苛烈を極めるものらしい。
「どうした伊織、開けないのか」
「まあちょっと待とう征。邪魔しに来たんじゃないんだからさ」
 ドアノブから手を離して‥‥‥道を開けるように、数歩、伊織はその場から退いた。
「邪魔しに来たのかとばかり思っていたが、勘違いだったようで何よりだ」
 憎まれ口を叩きながら、征一郎もそれに倣う。
『でも下手をすると、ステージは交渉が長引くかも知れないわ。私も出た方がいいかしら?』
『俺と会長が同時にここを空けるのは不味い。白ちゃん、まだ電話切ってないよね?』
『大丈夫です』
『それじゃまず、何枚要るのかを確認。次に、手ぶらでいいから、ここまで取りに来る人をクラスの中から出すように、電話の相手に指示を出して。破けてる方の暗幕は、事情を聞きに行くついでに俺が回収するから、教室に置いたままにしといていい』
『はい』
『で、会長。白ちゃんが電話切ったら、下の倉庫から予備の暗幕を要るだけ出して、渡す準備をするように指示して。俺はまず講堂に顔を出して、破れてる方の暗幕は帰りに回収する。事情はその時聞いてくるから、暗幕取りに来た奴はすぐ帰らせちゃっていい』
『ええ』
『この間、この部屋には会長しかいないから、会長は電話番。急ぎの用件だからって迂闊に出て行かない』
「なんだ。会長よりもよっぽど会長らしい仕事をしているじゃないか、副会長殿は。名物寮長で鳴らした悠木姉の薫陶が行き届いているね」
 指示する声を聞きながら、前会長は顎に指を当てる。
『オッケー、それで行きましょう。さ、今度もちゃっちゃっと片付けるわよ!』
 ぱん。恐らくは瑛里華が叩いたのであろう手の音が、監督生棟全体に響き渡る。
「号令役としての資質では、やはり会長殿に一日の長ありか。どちらかといえば技術よりもパーソナリティの問題ではあるが」
 そんなことを呟く征一郎の目の前、開けられたドアの向こうから、孝平が勢いよく飛び出してきた。
「‥‥‥あ、会長!」
「俺たちのことはいい。事件は監督生室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ。そうだろう?」
「はい! すみません、また後で!」
 立ち止まりかける孝平を送り出して、
「今年も盛況じゃないか」
 孝平が閉じなかった扉の向こうへ、今度こそ、伊織たちは踏み込んでいく。



「うわあ! お久し振りです、伊織先輩! 兄さまも!」
「って兄さん! やだちょっと征一郎さんまで! あああ何よもう、こんなに早く来るんなら先にそう言っといてくれれば」
「もっと早くから呼び出して、こき使ってやったのに、かい?」
「いやそうは言わないけど‥‥‥そりゃ、言いたくないとも言わないけど」
 だんだん小さくなる瑛里華の声がぶつぶつと繰り言を並べる。
「でもごめんなさい。状況はご覧の通りだから、あんまりお構いできないと思うわ。兄さんはともかく、征一郎さんをおもてなしできないのは残念だけど」
「無論、承知の上だ。構わず仕事を続けてくれ」
 真ん中の机に置かれたティーカップをすべて下げて、征一郎は給湯室へ向かう。
「あ‥‥‥わざわざ来てくださったのに申し訳ありません、兄さま。手伝います」
「気にするな。呼んでもいないのに勝手に押し掛けてきた客の茶など、客にやらせておけばいい」
 うっかり征一郎について行きかけた白の前で‥‥‥征一郎は立ち止まるが、振り返ることはしない。
「支倉から作業の指示が出ていただろう? するべきことを取り違えていては、片付く仕事も片付かないぞ、白」
 一年前には彼ら自身がこの戦場で指揮を執っていたのだ。忙しいのは承知の上であった。
「はい。ありがとうございます、兄さま。‥‥‥会長、わたし倉庫を見てきます!」
「お願いね!」
 駆け出していく白の背中を見送って、瑛里華は応接の椅子にすとんと腰を落とした。



「去年だって随分忙しいと思ったけど、五人と三人じゃ違うわね、やっぱり」
 疲れた様子でぐるぐる肩を回す瑛里華の前に、緑茶の湯呑みが置かれる。
「そういえば、俺たちが引退した時と顔触れが全然変わってないというか」
 続いて、向かいに座った伊織の前にも。
「ぶっちゃけ、去年のメンバーから俺と征を抜いただけ、だね。役員の補充はしないのかい?」
「ん。支倉くんみたいな‥‥‥ほら、今にして思えば、支倉くんっていろんな意味ですごい逸材だったんだけど、そんな都合のいい人なんてそうたくさんいるものじゃないし、そういう人が見当たらないのに闇雲に人だけ集めようとしても、結局はお互いのためにならないんじゃないか、っていう」
「だがそうはいっても、次の信任投票までには何とかしないと、次期生徒会の公式な役員が白ひとりだけ、という事態にもなりかねん。その上、万一白が立候補しなかったり、立候補しても信任されなかったりしようものなら」
 最後に、自分の湯呑みをテーブルに置いて、征一郎が伊織の脇に腰掛ける。
「そうそう、そこなのよ。正直、私たちもそこはちょっと頭痛くて」
 反対側の肩をぐるぐる回して解しながら、瑛里華は何度目かの溜め息。
「私と支倉くんがここにいられるうちに、何人か連れてきておいてもらわないと困る、って白には言ってるんだけど、でもやっぱり白、私のことに遠慮してるみたいなのよね。『瑛里華先輩が役職を離れてから声を掛けます』、『わたしが残れば引き継ぎも大丈夫です』って言って聞かないの」
「それはまあ‥‥‥俺たちの側からいえば、そんな風に気を遣ってもらえるのはありがたい話だけど」
 白の心配ももっともではあるが、それでも、孝平が生徒会に引っ張り込まれた去年の春と、今、つまり今年の秋とでは、事情がかなり違っている。
 あの時は、吸血鬼である会長が任期満了で職を辞しても、依然として吸血鬼が、つまり瑛里華が要職に残るであろう状況が目に見えていた。『仕事さえできれば誰でもいい』というわけにもいかなかったことの理由として、ひとつには吸血鬼と付き合い続ける時間の長さを考慮に入れる必要が確かにあったし、故に人選にも慎重を期さざるを得なかった。
「気持ちとしてはそうだけど、でもTPOってあるじゃない」
 しかし今、任期満了を目前に控えた瑛里華が予定通り生徒会を離れれば、取り敢えず吸血鬼はいなくなる。これからやってくる新人役員が監督生棟で吸血鬼と共に過ごす時間はかなり短い筈だ。まったく気を遣わないのはもしかしたら無理かも知れないが、瑛里華の側が少し注意していれば、それが問題にならない接し方を選ぶことはさして難しくないと、少なくとも瑛里華や孝平はそう思っている。
 そして‥‥‥そうこうしているうちにも、引き継ぎに使えた筈の時間は目減りしていく一方だ。今という時期は、差し迫った現実の問題にもきちんと目を向けるべき時期であるだろう。
「するべきことを取り違えていては、片付く仕事も片付かない、か」
 さっき征一郎が口にした台詞を、今度は伊織が呟く。
「後で俺からもよく伝えておく。それと、白の我侭に付き合せて申し訳ないが、役員が交代してからも、暫くは瑛里華と支倉でフォローを頼めないか?」
「もちろん。元はといえば、私に気を遣ってこうなってるんだもの。そこはお互い様でもあるし‥‥‥でも、もしも私が卒業するまでに引き継ぎの相手が現れなかったら、流石に、その後の保障まではできないわ」
「そりゃそうだな」
 頷きたくなさそうな顔で伊織は頷いた。
 それは確かに、フォローは無理だと考えるべきだろう。
 このまま事態が推移すれば、卒業後は再度千堂家に幽閉される可能性の高い瑛里華には。
「で」
 卒業したらどうするつもりなのか‥‥‥訊こうかとも思ったが、結局そのことについて伊織が何も言わなかったのは、白のものではない足音が階段を上がってくるのに気づいていたからだった。



「失礼します」
 まず、ドアを開けたのは孝平だった。
「ただいま戻りました」
 続けて白が監督生室に戻ってくる。
「あ、お帰りなさい。早速だけど支倉くん、暗幕どうなった?」
「どうも昨夜、何か重たい展示物を暗幕に引っ掛けたまま寮に帰ったらしい。文化祭自体が今日で終わりだから夕方には撤収だし、今晩また破れるだとか、そういう心配はいいと思う。破れてる方の暗幕は、わかるようにメモを挟んで倉庫に放り込んだ」
「ステージは?」
「オチ研は、高座に上がってる奴が舞い上がっちゃってて、もう何言ってるか全然わかんない感じだったんで、強引に切って次に回した。結局十分くらい押してるけど、昼の休憩時間を短縮して対応。午後はオンタイムか若干押しくらいで進行」
 聞き取りながら、瑛里華は手元の巨大な付箋紙の塊に要所をさらさらと書き付けて、
「オッケー。事情はわかったわ」
 上から二枚を引き剥がし、ホワイトボードの『未起票』と書かれたエリアに貼る。
「せっかく前財務も来てくださってるし、ふたりとも、次が来るまでは休憩にしましょう。終わったら白、そのメモを報告書に起こしてね」
「わかりました。あ、それでは、支倉先輩の分もお茶淹れてきますが、お代わりはいかがですか?」
「俺も手伝おう」
 白の言葉を制して、立ち上がった征一郎がその場の湯呑みを回収していく。
「兄さまは流石だねえ」
「うちの兄さまは全然だけどね」
「そんなに誉められたら照れるじゃないか」
「誉めてない誉めてない」
 くすくす笑いながら、白が給湯室に消えた‥‥‥ちょうどそんな頃合いのことだった。
『な、なっ、何じゃこりゃーっ!』
 学院のどこかで発されたらしい途轍もない大声が、監督生室の窓から飛び込んできたのは。



「悪いんだけど支倉くん、連行してきて。お茶はふたり分淹れとくから」
 それだけで事情を把握した瑛里華がぼそっと指示を出す。
「了解」
 ‥‥‥結局、白がお茶を淹れるよりも、再び孝平が監督生室から出て行く方が早かった。






 例えば、自分はどういう人間であるか、といったことに思いを致すとして。
「な、なっ、何じゃこりゃーっ!」
 この世に起きる大概のことを『取り敢えず大騒ぎするためのネタ』か何かと誤解している嫌いもないではない悠木かなでであるのだが、
「い、いっ‥‥‥いつの間にか、ベンチになった筈のケヤキがクリスティーナそっくりに育ってるーっ!」
 そんな前寮長ですら、ついうっかり大声をあげてしまうくらいには、彼女の眼前にある光景は珍妙であった。
「そっくりっていうか、クリスティーナそのものですが」
 どこか呆れたような口調で孝平が応じる。それもまた、この学院の敷地内においては半年ぶりのできごとだ。
「ん。それは見ればわかるけど、でもやっぱり驚くじゃない」
 笑って答えるかなでの表情は、今はまだ明るい。



「‥‥‥お弁当、持ってきたんだけどな。ベンチで食べようと思って。こーへーの分も作ったんだよ? ひなちゃんのも」
 そこに立っている筈だったものは、歴代の寮長や寮生が大切にしてきたあのケヤキ。
 だから、そこに設置されている筈だったものは、そのケヤキで作ったベンチだ。
 最期を看取った寮長として名を残すのが自分であったことには、実は未だに、かなでは内心で残念な想いを抱いてもいた。何となれば、ベンチは結局ベンチでしかないからだ。地面に脚を置き、その身に雨水を浴びたからといって、ただのベンチが立派なベンチに成長するというものでもない。
「だけど」
 だが実際には、生きたケヤキの代わりに置いた、ケヤキで作ったベンチ‥‥‥の、さらにその代わりに。
「これじゃあ座れないね」
 今、ここに鎮座しているのは、あの信楽焼の狸だ。
「教えてくれなかったんだ、こーへー。ベンチ、なくなっちゃうって」
 そこで初めて、かなでの声が曇る。
「本当、すみません。伝えなきゃってずっと思ってたし、時間の問題だってわかってたけど‥‥‥でもやっぱり、かなでさんに直接は言えなかった」
「わかるよ、こーへーの気持ち。わかるけど‥‥‥さ」
 俯いたまま孝平に向き直って、震える指先で制服の袖を掴む。
「かなでさんが卒業してから、あのベンチ、変形したり、ひびが入ったりで。後で材木屋に聞いたら、ケヤキっていうのは、原木をそのままベンチにできるような木じゃないって」
「ん」
「まだ残ってる部分はあって、もう一回ベンチを作るくらいは大丈夫だろうって聞いてます。でも」
「‥‥‥ん」
「でも、ちゃんと乾かしたり、材木として使える状態にするには、どうしても年単位の時間が必要になるって。ケヤキは‥‥‥元々、ケヤキっていう木はそういう木なんだ、って」
「そっか。それじゃやっぱり、材木屋さんとみんなに感謝だ」
 かなでが顔を上げた。
「本当はダメだって、そのままずっとは使えないってわかってて、だけどあの時、みんなはわたしの気持ちに付き合ってくれたんだね」
 今にも泣きそうな顔が、笑う形に歪んだ。
「材木屋以外は誰もそんなこと知らなかったんで、みんなは、ってとこは結果論ですけど」
「いいよ。次のベンチが大丈夫だったら、それで」
「それは大丈夫だと思います。材木屋が大丈夫って言ってますから」
「ん。それでいいよ」
 そのまま、掴んだままの孝平の制服の袖を目尻に当てて、乱暴に涙を拭う。
「‥‥‥痛い」
 だが、肌を擦るには硬く、吸水性にも極めて乏しい制服だ。ハンカチ代わりにこれほど向かない素材もそうはない。
 案の定、すぐに袖から手を離したかなでは、今度は自分の人差し指を擦った痕に当てざるを得なかった。
「当たり前です。ほらハンカチ」
「ありがと、こーへー」
 しかし、かなではそう言いながら、
「‥‥‥って、だから」
 差し出されたハンカチを受け取る代わりに、孝平の制服の胸に顔を埋めた。



 ばん、と扉を開けるなり、
「かなでお姉ちゃん参上!」
 数分前まで泣いていたとはとても思えない笑顔を見せて、かなではにっと笑った。
「あ、かなで先輩じゃないですか!」
 最初に歓迎の意を表したのは、給湯室から顔を出した白であった。
「じゃないですかって、さっき声聞いてわかんなかったの、白?」
「声? には、憶えがないんですが‥‥‥多分、給湯室にいたせいだと思うんですけど」
「あ、そっか。そうよね、そういえば」
「物忘れが酷いんじゃないか妹よ?」
「真っ先に忘れたい奴が何か言ってるわねさっきから」
「あはは。何かすっかり、いおりんの時の生徒会だねえ」
 かなではそのままずかずかと監督生室に踏み込み、適当な椅子に腰掛けて、目の前で繰り広げられるやりとりをくすくす笑いながら眺めているが、
「そうなんですよ元風紀委員長」
 次に呟いた瑛里華は、何やら困った顔をしていた。
「何かあったの、えりりん?」
「ご覧の通りです。今の生徒会、本当に兄さんと征一郎さんを抜いただけなんですよ。『いおりんの時の生徒会』から」
「え‥‥‥それって、新しく入ってきた子がまだ誰もいないってこと? 本当にそうなの、しろちゃん?」
「はい」
 頷きたくなさそうに白が頷く。
「あちゃー‥‥‥勧誘した方がいいんじゃないの? 来ないと風紀シール、とか」
 それは勧誘じゃなくて脅迫、と誰もが思ったが、誰も口には出さなかった。
「えと、そうなんですが、ちょっと事情がありまして」
 だから、次に聞こえたのは、答えたくなさそうに答える白の声だった。
「そっか。それじゃ仕方ない」
 ところがかなでは、そこであっさりと引き下がる。
「いや悠木、仕方ないなどと言っている場合ではなくてだな」
「そうよ。このままじゃ、私と孝平がいなくなったら生徒会が白だけに」
 ‥‥‥その後、盛大に肩透かしを喰った残りの面々が口々に何か言っても、
「生徒会のみんなが今困ってることは、きっと、しろちゃんだって同じに困ってることだよ。それでも『事情がある』んだから、どんな事情か知らないけど、きっと本当に、何か事情があるって思う」
 それでもかなでは、
「自分で全部わかってるんだから、最後は自分でどうにかするよ、きっと。ね?」
「‥‥‥はい。どうにか、します」
「ん。大丈夫大丈夫」
 あくまでも、白の味方であろうとしているようだった。



「そんなことより!」
 またも突然、かなでが声を張り上げる。
「お姉ちゃんはお弁当作ってきたのです! ちょうど昼時だし、こーへー、ひなちゃん呼ぼう!」
 続けて‥‥‥ずがんと、いかにも重たそうな音。
「随分いっぱい作ったんですね」
 古めかしいテーブルの上に置かれたものは、かなでが持参していた、籐編みの巨大なバスケットだ。
「まあ、わたしとダンナとヨメの分で三人前だからねー」
 どう見てもその倍はありそうだ‥‥‥と、かなで以外の全員が思う。
「でも他のみんなも、ちょっとくらいならつまみ食いしてもいいよ?」
 ちょっとくらいのつまみ食いで全部なくなる筈がない‥‥‥と、かなで以外の全員が思う。
「さ、こーへー。ひなちゃん呼びに行こうよ」
「はいはい。それじゃ、ちょっとふたりで行ってくる」
「おっけー。お茶淹れて待ってるわ」
「‥‥‥あ、また」
 何を思い出したのか、白がぺろりと舌を出す。
「お茶淹れる前に、出て行っちゃいました、ね」
 そう、一度ならず二度までも‥‥‥白がお茶を淹れるよりも、孝平が監督生室から出て行く方が早い、のであった。

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