音楽祭に向けて練習に熱が入っている音楽室は、居心地が悪かった。
弥生先生は迎えてくれたけれど、それでもなんだか居心地が悪かった。
だから俯いていて。
がらり、と扉が開いたので顔を上げると。
「あなたも入部希望者?」
「いえ……」
そんな会話が聞こえた。
そして、鈴木さんと目が合った。
瞬間的に、鈴木さんが目をそらす。あたしも視線を落とした。がらり、と扉が閉まり、きまづい空気はすぐさま吹奏楽のクラッシック音楽にかき消された。それがなんだか悲しくて、あたしは眼鏡を外し、ぐす、と鼻をすすりあげた。
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