スイング・スウィング! / 杉田俊輔

 突拍子も無い提案とか、面倒事とか、それはいつも鈴木友子からもたらされる。そんな今更なことを改めて考えながら、中村拓雄は大きな溜め息を吐いた。電子ピアノから響く音も、心なしか、いつもより元気が無い。
 次の瞬間、スタンドから大きな歓声が沸き上がった。周りでは、お馴染みスウィングガールズの面々が、手を取り合って喜んでいる。横目で友子を見ると、ドラムの田中直美と二人でハイタッチなんかしている。その隣では斉藤良江が、いつの間に覚えたのやら、トランペットでファンファーレを吹いていた。慌てて、拓雄は視線を上げた。どうやら、試合が動いたらしい。見逃してしまったが。
 スコアボードへ視線を移すと、どうやら今の一打で逆転したらしかった。なるほど、盛り上がるはずだ。けれど、スポーツに興味が無い拓雄としては、イマイチ熱中できないでいた。

 つまるところ、我らがスウィングガールズは。
 野球部の応援人員として、県営球場で応援演奏を行っているのだった。


[ << | INDEX | | >> ]


談話室 関口 / 新刊のご案内 / 通信販売のご案内 / 「談話室 関口」のこと / 掲示板 / 関連リンク ] 

http://psyx.niu.ne.jp/cafe/ 「談話室 関口」Website  管理者 : 織倉宗